続:ふとんむし@さくら1ch

◆ふとんむしとマジシャン


「5」「6」

「10」「8」

そのマジシャンはぺリオンで切り株を相手に奮闘していた.表情も必死の形相で,かなりキツイ状況である事が伺える.しばらく端で眺めていると半泣きの表情に変わり,ほかの切り株にも囲まれつつあったので,お節介とは思いつつスラッシュブラストを一閃して切り株を殲滅した.

一息つくべく,チェアに腰掛けてポツポツと話し出す.今まで僕が誰とも話さなかったのは,中高校生が多いっていう先入観から,話し掛けて13歳とかだったらどうしようと,一歩引いてしまっていたから.お兄さんも大変なんだよ(何.


幸い,話し掛けたマジシャンは僕の少し下の年齢だった.向こうも僕と同じ様な感じで誰とも喋らなかったらしい.かくしてミスターふとんむしは友達第1号と出会ったわけである.


「大丈夫?そのレベルで狩りならエリニアのスライムの方がいいんじゃない?」

「スライムは飛ぶんだも」


確かにスライムはいきなり3頭身ほどジャンプする事があり,あのダメージもレベルが低いと痛い.それを考えるとノロい切り株を相手にしている方が安全といえる.ただ,現状の攻撃力じゃ切り株じゃ効率が悪い.

と,色々考えたけれど,とりあえず僕が背後を守って囲まれない様にする感じでマジシャンの狩りを手伝った.11に上がったところでエリニアへ行こうと提案し,徒歩で向かった.到着後早速スライムを相手に狩りを始めるマジシャン.しばらく来て居なかったらしく,緊張のエンゲージである.しかしながらスライムは案外もろく崩れ落ちた.


「結構余裕じゃん?」

「レベル上がったからかな」


武器を買い替えるともう少し出力が上がりそうだけれど,メイプルの武器はほんとプレイヤーの好み次第で変わってくるので,特に何も言わなかった.買いたくなったら買えばいいし,現状でよければそのままでいいし.しばらくスライムをシバき続け,マジシャンはチェアで一服を始めた.


まだ始めて1週間ながらも,孤独な旅路に飽き飽きしだしていたので,こうやってたまに誰かと喋る事が出来ると楽しい.願わくは同じ位のレベルの同士と旅を続ける事だけれど,今目の前に座っているマジシャンはまだ若干12レベルに上がったばかりだ.ここから緑きのこや豚,切り株といった獲物を散々狩りつづけて20までレベルを上げるわけで,相当の時間がかかることは止むを得ない.僕は既に次の狩場である「砂漠」ですごす予定なので,差はどんどん開くだろう.


自分のこれまでの旅路.オルビスでボコられて金欠で帰れなくなった事,エルナスまで行過ぎて世界旅行で無理やり帰ってきた事,地下ダンジョンの恐ろしい敵,大陸の話をしてあげた.ただ,DEXやINTといった数値や特性の話の様な難しい事はマジシャンは苦手らしい.


ごはんを食べるという事なので,マジシャンと一旦別れた.その前にドロップで拾った赤ポーション30個と,帰還の書をあげた.これを持っていれば囲まれた時にセーフゾーンまで逃げ切れるし,立ち往生した時に近くの町で救援を待てる.初の友達登録と長話に付き合ってもらった御礼を述べ,あと微力ながらピンチの際は駆けつける旨伝え,僕はカニングへ向かった.

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◆グループクエスト


「135」


「235」


初めてのグループクエストの緊張から手がおぼつかず,僕はなかなか樽の上に乗れなかった.


「ふとんむしw がんばれw」
「がんばw」


うまくジャンプしきれず,何度か頑張ってようやくのぼれた.


「ふとんむし,1でいいよw」


リーダーの機転で僕は頂上の1の樽でお辞儀をし続けた.


なぜこんなことをしているのかというと,カニングから排水口を通って池へ狩りに行こうとしたら,グループへ招待されたのだ.ここは断る理由もなく,「グルクエ初心者ですが」と断って参加させてもらった.てっきりガチンコのエンゲージかと思っていたのだが,クイズと敵叩きを合わせた様な協同プレイだった.そのクエストの3ステージ目が樽の数字合わせなのだ.3人のグループメンバーが数字の書いてある樽の上に載って,リーダーが決定ボタンを押すと合否が判定される.合格すればクリアだ.


なんとかステージをクリアし続け,最終のボスがビッグスライム.1人はダメージさえ与えられず上で待機.2人は中距離攻撃でバシバシ当てつつ,僕はパワーストライクで微力ながら応援.しかし一撃300のダメージは痛かった・・・.


そんなこんなでなんとか1クールクリア.エメラルドを貰ったけれど,まだ装備は出来ない.装備できるレベルになる人が来るんだよ,ここ.


「もう1周いける?」というリーダーの申し出を断る理由もなく,1クール目へ突入.先ほどとは違い勝手が判っているのでチャットの言葉も軽くなる.そして,再びビッグスライムと対峙.先頭形態は先ほどと同じだ.僕も負けじとスピアを突き出していると,背後に何か落ちてきた.えっ,墓っ!?




リーダー殿,討ち死に.




グループクエストはリーダーが戦死してしまうと続行不可能となる.全員の「えーっw」という叫び声の中,「すまんwこれで終了w」というリーダーのひと声で今回のグループクエストは終了した.経験値もかなり上がって24から25に昇格した.武器をパンプキンスピアに持ち替えてステータスを上げた.ほんとに強いレベルの人が居ないと話にならないけれど,もう一度行って見たい.

(つづく)