週末東へ - ご焼香を

あれから3年。

 

aさんは位牌に姿を代えて水戸へ来ていた。

道中色々あったろうけれど、落ち着くべき落ち着き方をして良かったと思う。

とにかく彼が愛したヒトの傍に居れるのは良い事だ。

 

その寺はひろみさんのご実家で、時宗という宗派のかなり大きなつくりのお寺。

事前のイメージの倍程の大きさで面食らった。もうここから緊張する。

檀家さんを相当お世話なさっている様で、この2日間も相当忙しそうだった。

そんな中お邪魔して彼の3周忌。慌てて買ってきたお土産を渡した後、お堂に入り、彼女のお父様の南無阿弥陀仏にじっと聞き入っていた。

 

 

「ご焼香を」

 

 

と言われて慌てた。

どうやるんだっけ。

え、どうやるんだっけ。思い出せ。

立ち上がる途中に必死にその形式を思い出して、唯一思い出したのが

 

 

「オスマン・サンコンがお焼香を食べた」

 

 

だった。もうだめだ。このままじゃ食べてしまう・・と思っていたら、ひろみさんがゆっくりとジェスチャーで教えてくれた。

寺と判ってて来るのなら、作法のひとつでも頭に入れてくるのが社会人。道中何をしていたのか。そう、コンセントを眺めていた。

そんな場合じゃなかった。キリスト式の様な「歌って祈って送り出す」とはちょっと敷居が違う。仏式のイベントというものは本当に慣れてない。法要や葬儀は2・3回目/人生  位だろうか。会社でも、葬儀には自ら出向く事が全く無い(どちらかというと電報や慶弔金のとりまとめ方なので)ので、お焼香できない30代は、割と珍しいかも知れない。

 

 

どうにかこうにかお焼香も通過して、20分程の丁寧な念仏に包まれて法要が終わった。

お堂の下にある座敷でひろみさんのお母様にお茶を頂く。結婚式でお会いして以来なのでもう随分経っているのだけれど、Facebookで何度か拝見しているのでお久しぶりの様なお久しぶりでは無い様な。いいね!でお世話になってます。かな。

 

お茶時の話題はもっぱら自分の話だった。しかも割とご存知だった!自分の話から弟の話に続いて、大阪~京都方面の話や、凄くローカルな「桃谷」(大阪環状線)の話まで及び、割と関西ローカルな話もした。

 

だがこの、言葉少なに自室へ戻るお父さん、娘さんからそこそこの情報を得ているので、どんどん話のペースをもってゆくお母さん、終始にこにこしてる娘さん、何とか話についてゆく自分。このシチュエーション、何かに似てる・・と思いながら結構な時間話していたのだけれど、しばらくたってから気づいた。

 

「彼女のご両親に挨拶に来た彼氏」だ。

 

はっと気づいて、自分からも何か話題を出して少し方向転換しないと!と思って、思い出したのが

 

 

「ぼく、納豆好きなんですよねwww」

 

 

だった。事実好きなので良いんだけど、「納豆好きとしては、大阪でも売ってる様なお土産納豆じゃ駄目なんですよ。実際にお母さんたち水戸の方が毎日食べてる様な「毎日食べて当たり前の納豆」が食べたいんですよ。なので今回はスーパーへ寄って買って帰ろうと思ってるんですよねぇww」という納豆話に強引に舵を取った。

 

 

しかしこの話題がきっかけで、お母様に「壮ちゃんは納豆が大好き」というタグがついてしまい、これが翌日に影響する事になる。