ただやるだけならサルでも出来る

飛脚に派遣として勤めていた頃、ベテランの師匠が思い出した様によく言っていた。

初めてこれを聞いたのは20歳の頃だった。これは十数年後に言葉を変えて同じ内容の事を、別の人に言われる事になる。

 

とてもシンプルでわかりやすい例えで、今でも覚えてる。

自分は飛脚に入ってすぐ、この先輩のチームに呼ばれて、小物書類の仕訳と現場管制、繁忙によってはシュータのオペレーターあたりまでやっていたのだけれど、このチームが素晴らしかった。1日数万に及ぶ小物を10坪も無いスペースで24時間8人で捌く部署で、増える物量に対応しながら、全員が毎日スキルアップを続けていた。

 

サルも賢いのはご存知の事だけど、仕事の極意は本当にこれで、サルを超える仕事を考えるのは割と楽しかった。ある人はスピードを極め、ある人は完全ノーミスの仕訳を極め、ある人は書類の向きやサイズ大小をビシッと揃えて店内輸送箱に梱包をする。それぞれが何かのスキルに極振りしていて、その全員のスキルを全部持ち合わせていたのが師匠だった。

 

自分自身も色々考えた結果、やっぱり速度極振りで毎日時間短縮に一生懸命だった。自分のスキルは当然だけど、仕事の速度、いわゆる生産性を上げる為に作業ツールの改善や工夫を考えてるのは楽しかったし、今でもやっぱり楽しいのは現場かなぁとは思う。業域が変わった今も、速度極振りのスタイルだし、加えて今は「どうやったらこの仕事を早く進めて貰えるか」っていうテーマで仕事をしている。成果は余り出てない。

 

師匠には辞めてから数年経って、偶然西九条でバッタリ逢った事が有るけど、自分も舞洲に勤め先が戻り、恐らく帰りは同じ時間帯に西九条を通ってる筈なのに、1度も会わないあたりもう辞めたのかも知れない。前述の通り仕事の腕は誰にも負けない人だったけど、月曜日から入念に入念を重ねて予想をしていた競馬はいつでも負けてた。

 

あの仕事の腕や頭の回転数があれば、仕事しなくて良い位稼げるんじゃないかって思ってたけど、頭の回転数良すぎて完璧に出走馬の理解を深めた挙句、いつも大穴狙いのになるのは本人を眺めていて何となく判った様な気がした。人間ってどこかでちゃんとバランスが取れてる。