今の社長とは現場に居た頃も全く業務上の関連性が無かったので、社長として対面したのが初めてだった。とはいえ、親会社でいう役員からの転籍だったので、グループ内に対しても大型顧客に対しても影響力は当然大きかった。
声が大きく、行動は点と点で動いている様に見せて、大きな円を重ねて挙動する様な感じ。
小柄なので圧倒感は無いけれどスピード感があった。
業務上では、同じ部署ではあるけれど自分は生産部隊ではないので大きく関与する事が余り無かったものの、親会社に遠慮する事なく、自主独立した子会社として合理的・生産的なコスト運用を推進出来たのは、今の社長有っての事だと思うし、間接費はこの3年でかなり削減出来、一方で生産的なコストに還元する事が出来た。
公私の区切りを厳密に引いていて、交際費も最小限、正しく真っ当な姿勢を重んじる人で、あるべき社長のクリーンさを持っていた。
あと、会社創設以来初の「期末一時金」が支給されたのも現社長の提案だった。
たとえ数千円でも全従業員に支給すると莫大な金額になるので、なかなか実現が難しい事だけれど、創立25周年にして初のそれだった。売上が100億を超えたとは云えとてつもない黒字を出しているわけではないので、かなりの英断だったとは思うし、金額はともかく有るのと無いのでは全然違う。
旅行、特に電車。時刻表を物凄いスピードで使う、いわゆる「乗り鉄」。
旅行の話は割と盛り上がった。全国を部店長として歴任してきているので、都市圏から地方まで話題が尽きない。
お財布的に賢く旅行するテクニックなんかも豊富で勉強になった。
本人は全くそういうのを扱わないけれど、デジタル機材・ソフトウェアの可用性については理解が深く、「この写真からこの他社のトラックを消してくれ」とかっていうオーダーも普通に飛んできた。
3年の間、1度だけ2人で酒を飲みに行った。
取引先の創立記念イベントの後にフラッと入ったのが吉田バーだった。
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時計の音しかしない静かなバーで、響を静かに飲んだ。
お喋り大好きな取締役と管理職の多い社内にあって、静かに飲みたい酒を飲むという事が無かったので、貴重な時間だった。会社の人と、居酒屋でもなく、スナックでもなく、磨かれたカウンターでグラスを傾けるのが大好きな自分にあって、社内の人とバーへ入るというのは初の快挙だった。
何というか、やっぱり趣味のある人はいい。
仕事の話もヒトの話も、それはもう何というか会社というフィールドの中だけでお腹いっぱい。
そういう話じゃなくって、もっとこう、これが好きっていう話を投げて貰えると自分も話しやすいなぁとは思う。
これから何度、社長交代を経験するか判らんけど、「退任後は観光ガイドのボランティアしながら全国すみずみを旅行する」と断言して、サッサとボランティアに必要な検定や旅行の準備を進める様な社長は好きだった。
現場あがりの荒くればかりで本当に大変だったと思う。
自分がこの会社に来て3回目の社長交代。明日から新社長体制が発進する。