裸で戦う

 日航機事故から間もなく20年。新人警官へ当時捜索にあたった指揮官らの講義が催されているらしい。「極限状態でも優しい配慮をもてる警官に」というのは、警官として当たり前の心得だけれど、警官でなくてもこういう心理状態に置かれる事は警官でなくとも有る。極限状態の中にハマってる自分を無理やり配慮出来る様な方向へブン回すのは物凄い精神力が要ると思う。警官に限った事では無いけれど、そういう強い人間にはなりたいと僕も思う。極限状態と割り切って、いったん涼しい顔になって自分の出来る事を整理できる様になりたい。

 日航機はACCの誘導や横浜米軍の応援をかわして御巣鷹山へ突っ込んでしまったわけだけれど、飛行機に乗るたびに、そういう事故に遭うかも知れないという意識は有る。もうでも離陸した瞬間から何が有っても自分の力は及ばない事は覚悟してしまうし、あとは落ちてゆく間に何をするかだけだから。日航機の様に数十分も飛行しているのはごく稀だろうし、エンジン・油圧系以外のトラブルで無い限り、時間的には15秒から20秒位が「自分に残された」時間になるだろう。

 外部との連絡が取れない、まさに密室の空間で、誰にも自分の最期の声をリアルタイムで聞かせる事が出来ない。ただ、リアルタイムで聞かせる事が出来なくても、レコードして伝える事も出来る。常々僕はwebサイトの素材だとか、いい感じだと思った時にその記録が出来る様にデジタルカメラを持ち歩いているわけで、このデジタルカメラは、もう殆どの機種がそうである様に音声入りのビデオ録画が出来る。もう駄目だと気づいてからそんな事を思い立つ余裕が有るのかどうか判らないけれど、その時点での自分の状況、愛してやまない人たちの名前、お礼。もう少し時間があれば、自分を含んだ事故をネタにあれこれと騒ぐであろうメディアに対して文句のひとつも言えるかも知れない。

 自分が何故死んでしまったのかも判らない遺族は何か胸にひっかかる様な悲しみがきっと有ると思う。日航機123便の事故にしても、結局確固たる原因は明言されていない。事故調の発表では「圧力隔壁」が原因とされているものの、当時の搭乗員の行動、生存者の証言でその矛盾点が指摘される。自衛隊の無人偵察機、ミサイル、機内爆弾。米軍の救援活動を拒んだ政府にも謎は残ったまま、

 20年経って、ボイスレコーダーやCGをDVDにしたり、ジャーナリストなんかの長期取材の調査追及成果をそこそこの値段で売り出す業者もそろそろ出てくる、あるいはもう出てるのかもしれない。これらはイベント的なメディアにはなるにしても原因解明は出来ない。作りや帯によっては関係者の怒りを買う代物にもなる。知る事は大切な事だけれど、いかにも金儲けっていう感じの帯がついた書籍・メディアは腐る程。やりきれない。

 米軍が何故救援活動を中止したのか っていう事態にもきっと触れられると思うけれど、中止どころか実行にあらず、むしろ支援を警察から拒否された点に有る。軍をどう考えているのか判らないけれど、絶対服従な組織の中、映画の様にスタンドアロン的な行動でもとればどうなったものか判ったもんじゃない。米軍全体が警察の拒否を無視して一丸となって行動になれば、それはそれで外交的な問題になるし、後々「米軍が一丸となって現場活動を行った謎」なんて見出しが多数のメディアに踊って、米軍の原因説が囁かれるのは目に見えている。日本での拠点存続を目論む上でそういう不利なゴシップは米軍としても避けたい。そういう事情から、どちらかというと警察の動向に問題が有る様な気もする。

 当の日本国警察と自衛隊の動きも随分遅かった。災害派遣命令が下ったのも発生から随分後で、現地状況は訓練名目て無理やり離陸したRF4偵察機が初めて捉えた。今日の有事発生でも判る様に、救援機関の立ち上がりは物凄く遅い。平地での地震でさえ。

 状況が判らない事には部隊派遣もままならないのは判るけれど、それでも3時間有れば現地状況確認、救援物資・部隊の立ち上げ、現地へ出発が出来ると思うんだけれど、無知の空論ですかね。

 

 何の話か判らん様になってしまった。万が一僕が事故に遭って、奇跡的にカメラやSDカードが残存していれば、放送局や映像メディア会社なんかに結構高い値段で売れるかもしれませんね。大規模な事故になればなるほど値段は上がってくだろうから、オークションにでもかけて売っ払うと大変な落札額になるかもしれない予感。

 新人警官が、ベテラン指揮官の講ずる「極限状態でも優しい心」を持つには1年や2年じゃ到底無理な話だけれど、十分な経験と知識を積んで力をつけて、少しでも近づいてゆける様に常に意識として持ち続けてもらいたい。

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 昨晩「魔界村」の話になって、そろいもそろって

 「すぐ裸になるんだよな」
 「裸になってすぐ殺られちゃうやつ。」
 「裸で うろつくやつ」

 って僕を含めて3人が裸ネタで突っ込んだのにウケた。あれは面白いけれど大変なゲームだった..。